THE SOUND OF SECRET MINDS

LSTDのブログです

2018年の3曲

超久しぶりにブログを更新します。

前回の更新が2017年1月で、その当時は単なるインテルの戦績メモと化していた当ブログ。

その後、プライベートでの精神的余裕がなかなか持てず、更新のモチベーションを上げられないまま時が過ぎてしまいましたが、この年の瀬に、ようやく重い腰を上げてみました。



今回の記事タイトルは「2018年の3曲」です。



以前は頻繁に音楽ネタをアップしていましたが、だんだんその回数も減り、個人的ベストも「○○年の10枚」が「○○年の5枚」と次第に減って行き、さんざんサボっておいてこの有様です。

ここ数年は新しい音源探索も億劫になり、過去音源の掘り起こしばかりで、2018年は新譜は殆ど買っていません。分母が減る一方なので、今年はシングルやアルバムなどのパッケージではなく、楽曲を3曲選びました。



それでは、以下、2018年のベストトラック3曲です。



1.「ヒューリスティック・シティ」フィロソフィーのダンス


遅ればせながら、2018年における最大の発見は、”フィロソフィーのダンス”でした。


前述したように、ここ数年は新たな音源を探すこともせず、既存音源を聴き直しているだけの状態でした。
特にアイドル界隈では、東京女子流の小西彩乃の脱退・引退やEspeciaの解散により、「俺、結局、推しの現場を一度も見ることが出来なかった。トマパイ以来、何も学んでいなかったな。」と自分自身に失望し、モチベーションが一気に低下して、新たなアイドルの探索は全く行っていませんでした。


それが、今年の夏、普段はめったに聞かない地元のローカルFM局で流れていた”フィロソフィーのダンス”の「イッツ・マイ・ターン」を聴き、そのアシッド・ジャズ風な楽曲に心を鷲掴みにされました。さらに、その番組内のインタービューで「かつてバンドを組んでいたが解散し、今のプロデューサーに拾われた」的な発言に興味を抱き、彼女たちのプロフィールや音源をネットで漁っているうちに、完全にハマってしまいました。
私が”フィロソフィーのダンス”に抱く熱量は、2007年6月下旬の「ポリリズム前夜」にPerfume関連情報を必死に漁りまくっていた頃のそれに匹敵する程で、彼女たちとの出逢いは「10年に一度」と言っても過言ではないでしょう。


ここで、”フィロソフィーのダンス”をご存じない方のために説明しておきます。
フィロソフィーのダンス(THE DANCE FOR PHILOSOPHY)とは、SMEのプロデューサー加茂啓太郎氏が手掛ける「コンテンポラリーなファンク、R&B、哲学的な背景を持つ歌詞をアイドルに歌わせる」というコンセプトで展開している女性4人組のアイドルグループです。


フィロソフィーのダンスの魅力は、先ず楽曲の良さ。
私はアイドル曲に関しては一貫して、所謂「楽曲派」を通しています。たとえアイドルであろうと、楽曲として世に出すのであれば鑑賞に堪えうるクオリティが求められるのは当然であり、アイドル・ヲタのようなコア層以外でも十分楽しめるものでなければならない、と考えているからです。このスタンスは、私がアイドルに目覚めた40年以上前から変わっていません。


彼女たちの楽曲は、ヤマモトショウ氏の作詞による哲学(フィロソフィー)をテーマとした歌詞を、70~80年代のR&B、ソウル、AORやシティポップ、さらに90年代のアシッド・ジャズまで、黒人音楽のファンクネスを、今の時代に合わせてアイドルポップとして蘇らせたトラックに乗せて歌うもの。特に、編曲の元ネタになった楽曲へのリスペクトとも言える、さりげない『引用』が実に楽しく、編曲を手掛ける宮野弦士氏の才能に感嘆するばかり。「これはアレだな」とニヤける対象が、ナイル・ロジャースボズ・スキャッグスホール&オーツカーティス・メイフィールドタワー・オブ・パワー山下達郎角松敏生などなど枚挙に暇がない。
まあ、この辺りはプロデューサーの加茂氏に完全に釣られているとも言えますが(笑)。


そして、もう一つの魅力は、そんなトラックで歌う4人の声のキャラクターの良さ。甘く柔らかな声質の奥津さん、アイドル声の佐藤さんとアニメ声の十束さん、そしてソウルフルで力強い日向さんと、振り幅の広い全く異なる4人の個性が、絶妙なバランスと可能性を感じさせます。


さらに言えば、メインでボーカルを務める奥津さんと日向さんの歌唱スキルの高さ。
二人ともアイドルになる前はバンドでボーカルを担当したり、シンガー・ソング・ライターとして活動していたとの事ですが、そういった下地があることが楽曲に説得力を持たせています。特に「アイム・アフター・タイム」「ジャスト・メモリーズ」等は、しっかりと歌唱できなければ、単に唄わされているだけの残念な楽曲になっていたでしょう。


さて、随分と前置きが長くなってしまいましたね。


入手可能な音源は全て手に入れ、個人的にもの凄い勢いでヘビーローテーションしているフィロソフィーのダンスですが、「2018年の3曲」の1曲として、「ヒューリスティック・シティ」を選曲しました。


フィロソフィーのダンスの楽曲の楽しさは、前述した様に「元ネタのさりげない引用」にあります。

この曲は、90年前後のアシッド・ジャズサウンドを今に蘇らせているのですが、一捻りがあって、IncognitoBrand New Heaviesといったアシッド・ジャズ系バンドがTOTOのGeorgy Porgyをカバーしたような感じと言えばよいでしょうか。


さらに歌詞の内容に、『次の時代いきましょう わたしが覚えておくから、今を』『当たり前のようにぜんぶは連続だってふりをしてる』『まだ次の名前だって知らないけど、いいの』とあるように、時代の移り変わり、つまり「平成の終わり」をテーマとしていることから、平成の始まりの頃のサウンドを今やることで、アシッドジャズの根源ともいえるレアグルーヴ発掘の元ネタである70年代のR&B・ソウル・AORから続く大きな時代の流れを表現したのでしょう。端的に言えば「レアグルーヴ歌謡」。これって誰得? 間違いなく俺得!


また、MVで描かれる風景も秀逸で、ブラウン管モニタ、街の看板、商店街のシャッターなど、時代の流れに取り残されたモノに溢れ、メランコリックな雰囲気に胸が締め付けられます。


平成の終わりに咲いた哀愁漂うレアグルーヴ歌謡を、ぜひ皆さんも体感してください。



さて、今回選曲するにあたり、候補として「生の哲学」をテーマとした、Earth, Wind & Fireを彷彿させるポップなディスコナンバー「ライブ・ライフ」とぎりぎり迷ったのですが、年の瀬も押し迫った12月中旬にリリースされた「ヒューリスティック・シティ」をベストとしました。


そんな”フィロソフィーのダンス”ですが、1月にワンマンライブで新潟にやってきます。当然チケットを入手済みです!
『推しの現場』を今度こそ。




2.「アイデア星野源


常々、星野源は凄いなあと。そのマルチタレントぶりには驚かされるばかりなのですが、特に音楽家としては類稀な才能の持ち主だなあと。


楽家としての星野源SAKEROCK時代から異才ぶりを発揮してきたところですが、ソロアーティストとしては3枚目のアルバム「ストレンジャー」辺りからその才能が開花してきたと感じています。


特に「ストレンジャー」に収録されている『ワークソング』。あの曲、凄いですよね。完全にジャズですよ。それもテンポの速い4ビートで始まって、サビ前から4拍子~3拍子を行ったり来たりしながらワルツのままサビを迎えて間奏。また4ビートに戻って、という構成。だいたい、2コーラス目の導入部でリズムがブレイクして、その後アフロキューバンで入るじゃないですか。こんな複雑な構成のジャズをJPOPに落とし込んで、あくまでもサラッと聴かせるんだから、ただもんじゃねえなと。こんなJPOP今まで聴いたことないですよ。この衝撃は、ある意味、Perfumeポリリズム」と同じでしたね。


また、グルーヴへの拘りも半端ないですよね。4枚目のアルバム「YELLOW DANCER」に収録されえている『Friend Ship』。あれって、ツインドラムで録音されているじゃないですか。ツインドラムってリズムのうねりが生じて、独特のグルーヴが生まれますよね。スタッフにおけるクリス・パーカーとスティーヴ・ガッドの様な。ああいうスタイルをJPOPに導入する拘りは、そもそもが打ち込みに頼らずにフィジカルな演奏への強い想いもあるのかなあ、と感じた次第。


以上の事から解るのは、星野源が今までの音楽体験について、どこかから借りてきたものをそのまま出すのではなく、きっちりと咀嚼し理解し、自分の物として表現できる才能がある、という事です。


それと、詩の世界も独特ですよね。


私はファーストアルバム「ばかのうた」に収録されている『くせのうた』が大好きなんですが、
『君の癖を知りたいが、引かれそうで悩むのだ 昨日苛立ち汗かいた その話を聞きたいな』
と始まるあの曲。男女のラブソングとの事ですが、私には、友達が欲しくてもなかなかできない男子が、自分と趣味が合いそうな同級生(男子)に興味を持ち、友達になるにはどうしたものか、と悩む風景が見えました。
『さみしいと叫ぶには、僕はあまりにくだらない』『覚えきれぬ言葉より 抱えきれぬ教科書より 知りたいと思うこと 謎を解くのだ 夜明けまで』
直接的に情景や心情を描写するのではなく、独特な比喩表現や選択された言葉により、様々な解釈ができる。つくづく言葉の使い方が深いなあと。
私は音楽を聴いていても、割と歌詞を聞き流してしまう方なんですが、キリンジサカナクション星野源は、歌詞が耳に残って「何を歌っているんだろう」と気になるんです。


またもや前置きが長くなってしまいましたね。


さて、2018年のもう一曲は、おなじみ星野源の「アイデア」です。


この楽曲は、星野源自身がこれまでの自分とこれからの自分を表現していると解説していましたが、その構成に度肝を抜かれました。
ドラマの主題歌として初めて聴いた時は前奏から1コーラス目まででしたが、マリンバの音色が聴こえたりして、SAKEROCK期から今に至るまでのエッセンスが凝縮されいると感じました。ウチの母親のようにNHKの朝ドラは欠かさず見ても、星野源が歌を唄う人だという認識が無かった高齢者層にも、その人となりが届いたことでしょう。(ホントかよ・笑)


爽やかに「おはよう 世の中」で始まる導入部、「モノラルのメロディ」と歌詞に込められたドラマの主人公への想い。実に良く出来たドラマ主題歌だと感心しました。


しかしもっと驚いたのは、それからしばらくしてフル尺が公開され、2コーラス目以降を聴いた時。
今までなかったMPCによるビートミュージックと、途中の突然すぎる弾き語りを挟んでラストに向かう構成は、実に「アイデア」に富んでいるなあと。
特に間奏部分のフューチャーベースっぽいサウンドが新鮮で、この人は常に色んな音楽を聴いて貪欲に吸収しようとしているんだなあと。ただ単にEDMに攻め込まれるだけじゃなかったんだなあ(謎・笑)



この曲、主題歌として初めて聴いたとき、「朝の歌にしてはBPM早めで忙しないなあ」と思ったんだけど、これは2コーラス目以降のダンスビートに繋げるためだったのかあ、やられたなあ、と納得しました。


それと、朝の爽やかな1コーラス目と対をなす「おはよう 真夜中」で始まる2コーラス目。韻の踏み方も見事ですが、この一言で自分の「陰」や「闇」に対峙する姿を想像させる言葉使いの上手さ。「生きてただ生きて 踏まれ潰れた花のように にこやかに 中指を」の『中指を』に込められた想い。この辺の表現が星野源だなあと。なんて言うか、死の淵を目の当たりにした人が紡ぐ言葉は説得力があるな。


楽家としての星野源の才能を改めて実感した1曲でした。



3.「無限未来」Perfume


私が「リニアモーターガール」で初めてPerfumeを知ったのが2005年、音源や情報を漁りドップリと嵌まってしまったのが2007年、ライブに通いファンクラブ会員にもなり、もう後戻りできない状態(笑)になったのが2008年。あれから随分と時が経ちました。


今ではすっかりJPOP系フェスやロキノンの常連になり、ライブ会場に訪れるファンも、アイドルというよりはアーティストとして彼女たちを見る人達の方が多いかもしれません。もはやライブ会場でヲタ芸やコールも見られなくなってしまいましたしね。


確かに彼女たちはプロフェッショナルな表現者として「アーティスト」です。しかし、私にとって、彼女たちはアーティストである以前に「アイドル」です。その存在に憧れ、その存在を愛でる、紛れもないアイドルです。今までもそうだったし、これからもずっとそうです。


多人数グループでの定年退職のような卒業やグループの解散、また結婚などを機にアイドルから立ち位置を「タレント」に変更した多くの女性アイドル達の姿を見て、「一定年齢を過ぎたらアイドルではいられなくなるのか」と考える方もいるかもしれませんが、私は女性アイドルに年齢は関係無いと思っています。


Perfumeが素晴しいなと思うのは、入れ替わりの激しいアイドル界において、「年相応に振る舞う」「パフォーマンスのクオリティを保つ努力を怠らない」「前に進む」という3点を突き詰めながら、10年以上第一線を走り続けてきたわけですが、その結果として「素のままで飾らないが、立ち振る舞いはプロフェッショナルで実にエレガント」というPerfumeブランドを確立した事です。


またまた前置きが長くなりましたが、そんなPerfumeの「無限未来」を2018年の曲として選びました。


結局、EDMに馴染めないままブームが終焉を迎えそうで(ホントかよ)、ちょっと胸を撫で下ろしている今日この頃です。


ダンスミュージックの流行がビートミュージック~フューチャーベースの流れに傾いてきているのかどうか、全然詳しくないのでわかりませんが、中田ヤスタカの作る音がそうなってきているので、きっとそうなのでしょう。


私のダンスミュージックの遍歴は、テクノ・ハウスにたどり着く前には、ソウル・R&B~アシッド・ジャズドラムンベースブレイクビーツビッグビート)という流れでした。もともと、BPM160とBPM80を行き来するのには慣れていた(?)ので、フューチャーベースで特徴的なBPM160台で細かくビートを刻みながら、半分の80台でゆったりとしたグルーヴで横に揺れる、というのは全く違和感がなかったです。ビートの速いドラムンにその半分のBPMでラップを乗せるってのは昔から在りましたしね。ただ、BPMの速い音楽は『アホの子の音楽』と言われてるので、それを如何にセンス良く演出するかがポイントになってきますけど(笑)。



この曲は音使いが繊細かつ荘厳で全体的に落ち着きがあり、緩急のつけ方も実にエレガントで、彼女達の年齢に合わせた『年相応の変化』が良く現れていると思います。そしてなにより、MVをご覧いただくと分るように、音に合わせて舞う彼女たちの、なんという神々しさ。


さて、2019年を迎えて2月が来ると全員が30代となります。これからの日本の30代女子を代表する存在として、輝き続けて欲しいですね。
彼女たちの目の前に、無限の未来が広がりますように。



以上、2018年の3曲でした。



最後に、ざっくりとしたまとめ。


2018年リリースで良かったもの
「バイタル・テンプテーション」:フィロソフィーのダンス(配信)
「イッツ・マイ・ターン / ライブ・ライフ」:フィロソフィーのダンス
「ラブ・バリエーション with SCOOBIE DO / ヒューリスティック・シティ」:フィロソフィーのダンス
「POP VIRUS」:星野源
「Future Pop」:Perfume
「Saravah Saravah!」:高橋ユキヒロ
「M-P-C “Mentality, Physicality, Computer"」:冨田ラボ


2018年に入手した過去音源で良かったもの
「FUNKY BUT CHIC」:フィロソフィーのダンス
「THE FOUNDER」:フィロソフィーのダンス
「ダンス・ファウンダー (リ・ボーカル・バージョン)」:フィロソフィーのダンス
「LM」:グッドラックヘイワ
「Material」:CID RIM
「T H E」:Tricot
「A N D」:Tricot
「3」:Tricot


参考までに
Perfume 「Let Me Know」


冨田ラボ『M-P-C feat. Ryohu(RECORDING VIDEO)』


冨田ラボ 『OCEAN feat. Naz / パスワード feat. 長岡亮介』TEASER


フィロソフィーのダンス/ライブ・ライフ


フィロソフィーのダンス/ ダンス・ファウンダー(リ・ボーカル&シングル・ミックス)


GOOD LUCK HEIWA " Longevity"(Nagaiki) at Liquid Room Tokyo Japan 25-Nov-2016


CID RIM - SURGE (Official)


tricot on Audiotree Live (Full Session)


以上、2018年の最初で最後の投稿でした。


それでは皆さん、良いお年を!